人工知能は大学を変革する。その方法とは

Graduates gather outside the Sheldonian Theatre after a graduation ceremony at Oxford University, in Oxford, Britain July 15, 2017. REUTERS/Hannah McKay - RTX3BKLR
'Universities have sown the seeds of their own disruption.'Image: REUTERS/Hannah McKay - RTX3BKLR
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人工知能(AI)は、いまこそ登場すべき技術です。

AIは囲碁やポーカーで人間の能力を上回るようになりました。ディープ・ブルーがチェスの世界王者ガルリ・カスパロフを圧倒してから20年、AIはますます深く私たちの生活に浸透しています。ウェブ検索の方法や医療上の助言の受け方、銀行から融資を受けられるかどうかにも影響を及ぼしています。

ディープマインド、マジック・ポニー、アヤサディ、ウォルフラム・アルファ、インポッシブルなど、最も革新的なAIの飛躍的進歩と、それを推進する企業は、大学から生まれています。そして今、AIは大学を変革しようとしています。

AIは研究と学習のための新たな科学的インフラであり、大学はこれを受け入れ、主導する必要があると私たちは考えています。そうしなければ、大学はますます時代にそぐわなくなり、やがて不要になるでしょう。

大学は自らの輝かしい発見によって、自らを揺るがす変革の種をまいてきました。このAI革命に大学がどう対応するかは、科学、イノベーション、教育、そして社会そのものを大きく変えるでしょう。

ディープマインドは3人の科学者によって創設され、そのうち2人はユニバーシティ・カレッジ・ロンドンで働いていた時に出会いました。創設者の一人であるデミス・ハサビスは、UCLで認知神経科学の博士号を取得し、MITとハーバード大学で博士研究員として研究しました。AIと機械学習が科学的発見のプロセスを改善すると確信する、多くの科学者の一人です。

アベリストウィス大学の科学者たちが、仮説の立案、実験の設計と実施、データ分析、そして次に実施する実験の決定まで、科学的プロセス全体を自律的に遂行するロボットシステムを開発してから、すでに8年が経ちました。

複雑なデータセット

科学に応用すれば、AIは自律的に仮説を立て、予想外のつながりを見つけ、知見を得るためのコストを削減し、予測する能力を高めることができます。

リード・エルゼビアなどの出版社は、学術文献の系統的レビューの自動化にAIを活用しています。また、剽窃や統計の誤用の確認にも利用できます。機械学習は、研究プロジェクトにおける非倫理的な行為を、発表前に検知できる可能性があります。

AIは科学分野の境界を越えてアイデアを組み合わせることができます。特定の知識分野で専門性を深めるよう求める学術的圧力は強くありますが、機械学習は異なるアイデアの衝突を促し、複数分野の協力を要する問題の点と点を結びつける助けとなります。

AIの能力が高まるにつれ、指示された知識やデータを組み合わせるだけでなく、自律的に組み合わせを探すようになります。また、大学と外部機関との連携、たとえば医療分野における医学研究と臨床実践の連携も支援できます。

大学の研究に対するAIの影響は、科学技術の領域にとどまりません。

哲学的な問い

かつて人間が行っていた多くの活動や意思決定が機械に置き換えられたり、機械によって補強されたりする世界では、人間であるとはどういうことかという根本的な哲学的問いが生じます。コンピューター技術の先駆者ダグラス・エンゲルバートは、マウス、ウィンドウ、ファイルをまたぐ編集機能などを発明しました。彼は1962年、「人間の知性を拡張する」ことについて記し、この問題を見通していました。

心理学や倫理学などの専門知識を生かし、人々が知的な機械やシステムとより実りある形で協働する方法を考える必要があります。

AIが雇用の水準や質にもたらす影響と、たとえば公共政策や経営に及ぼす意味について、研究が必要です。

AIを教育と学習に活用する場合、課題の採点など、日常的で(教員にとってやりがいの少ない)学術業務の多くを自動化できます。ベルリン工科大学などでは、自然言語を使う知的エージェントであるチャットボットの開発が進んでおり、学生の質問に答えて履修計画の作成を支援します。

バーチャルアシスタントは、より個別化された学習の指導や案内を担えます。カーネギーメロン大学は、オープン・ラーニング・イニシアチブ(OLI)の一環として、AIを活用した認知チューターに長年取り組んできました。同大学は、教員との接触を最小限にして実施したOLIの統計学コースで、学生がより少ない学習時間で同等の学習成果を得たと確認しました。ジョージア工科大学のある授業では、学生たちは、人間からのフィードバックとボットからのフィードバックを区別できませんでした。

グローバルな教室

複合現実とコンピュータービジョンは、関心や理解を促す、高い忠実度と没入感を備えた環境を提供できます。シミュレーションやゲームの技術は、より直感的で適応的な方法で学生の参加を促し、学習を深めます。また、学生が知識の共同構築に参加し、大学の研究活動により深く関わる機会にもなります。こうした技術によって、大学外の人々や世界中の人々も、グローバルな教室やギャラクシー・ズーのような参加型プロジェクトを通じて、科学的発見に参加できます。

教育の質を高めるだけでなく、AIによって、より多くの人々がコースを受講できるようになります。かつて教育へのアクセスは教室の規模によって制限されていました。この5年間で、大規模公開オンライン講座(MOOC)などが発展し、数万人が幅広い大学科目について学べるようになりました。

しかし、高度な学習の多くとその評価には、今も自動化できない個人的かつ主観的な注意が必要です。テクノロジーが「教室を反転」させたことで、大学は、従来型の講義ではなく、個別指導や実地研究により多くの時間をかけるなど、どこで真の価値を加えられるかを考えざるを得なくなっています。

成果のモニタリング

大学の研究・教育活動で生み出される膨大なデータにAIを活用すれば、大学の事務プロセスにもメリットがあります。研究、教育、多様性の推進など、大学の使命に照らした成果のモニタリングに利用でき、頻繁に実施することで、より迅速に対応できる運営を支援します。大幅な時間差のあるデータに基づくことが多い大学ランキングの質も高められます。志願者の選考をより迅速かつ効率的に行うこともできます。

AIは学生一人ひとりの成績を追跡できます。ジョージア州立大学やアリゾナ州立大学などは、AIを成績の予測に活用し、学生が能力を最大限に発揮できるよう、支援が必要な時期を示し、退学を防いでいます。

学生や職員のデータ分析は、プライバシーと機密性をどう尊重するかという重大な問題を提起します。そのためには、慎重に策定された実務規範が必要です。

ブロックチェーンは、学生や職員の成績・資格を、即時に参照でき、改ざんできない形式で記録するために使われています。これは非倫理的な行為の防止に役立ち、AIと組み合わせれば、学生の学業やキャリアの進展について新たな知見を得られる可能性があります。

大学は、AIが生み出す学際性の支援に向けた新たな機会を見極める必要があります。研究面では、データサイエンティストに特に需要があることから、新たな学部や職務の創設が必要になります。カリキュラムも変化に対応し、AIを開発・活用する科学者や技術者を育成するとともに、将来の仕事やキャリアが、機械の能力と自らの技能をどれだけうまく結びつけられるかに左右される、医学、会計、法律、建築など多様な分野の学生を育てなければなりません。

新たなカリキュラムは、予測困難なAIの発展の道筋に対応できるものとし、企業の目先の需要ではなく、深い理解に基づくべきです。

影響への対処

大学は、AIや自動化のような破壊的な技術変化を推進する存在です。大学には、より広範な社会的役割を省察し、こうした変化に対する社会のレジリエンスを高める機会を創出する責務があります。

技術の進歩による失業の影響に対処しなければなりません。大学は、仕事に悪影響を受けた人々に技能と機会を提供する助けとなれます。

AIの開発や活用に通じた人材をめぐる競争は激しく、大学では有能な職員の多くが民間部門に引きつけられています。大学にとって差し迫ったAI課題の一つは、自らのAI人材を確保し、意欲を高めるために、より良い雇用条件とキャリア機会を整えることです。柔軟で機動的かつ、外部のアイデアとの交流に応じられる職場をつくり、大学と企業の間を人々が移る際に、キャリアを組み合わせられる環境を開く必要があります。

Image: オリヴィエ・H・ボーシェーヌ

第4次産業革命は、現代社会と経済のあらゆる要素に大きな影響を及ぼしています。大学の構造や組織が比較的影響を受けなかった過去の産業革命とは異なり、AIにおける技術の組み合わせは大学の根幹を揺るがす可能性があります。AIの進歩の中心にある「ディープラーニング」という概念そのものが、大学の存在意義に明らかに関わり、新たな競争を生む可能性もあります。

適切に活用すれば、AIは大学がすでに行っていることを拡張し、その力を高めることができます。しかし、研究、教育、社会との関わりという使命を継続するには、根本的な再評価と変革が必要です。大学はその課題に応えられるでしょうか?

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